
最近NYの事務所近くにラーメン屋がオープンしました。
ずっとラーメン屋、出来ないかなあと思っていたので、これは嬉しかった。ただこの手の店は、みせかけは日本食レストランの風情でも経営や、従業員、そして調理人が日本人ではなく、どこかアジア系の人だったり、ヒスパニック系の場合があって、そうなると大概は味が違う。心配はしていたのだけど、試したところギリギリセーフ。以来、ほぼ毎日のようにランチに通い、一通りメニューをこなしてみた。いやあ、全然OKです。担々麺が今のところマイフェーバリットですが、丼ものも結構充実してて助かってます。オープンからもう1ヶ月くらいですが、ほぼ毎日のように見ていると、このラーメン屋さん、かなり成功しているようです。僕らも、飲食ではないですっが、同じエリアで洋服屋をやっているので、なんとなく業種は違うとも、お客さんの入りとか、種類とか、結構見てしまうし、いろいろ想像を巡らしてみたりしてしまう。オープンしたてはそこそこだったのに、徐々にその情報は広がったのか、今では昼時は満杯状態。プラス、テイクアウトのお客さんがスズナリで、そのキッチンや、フロアはカオス状態というか、てんてこ舞い。それを目に前にして思うのは、いやあこのラーメン屋さん、当たったなあと言う事。特別最高に美味いとか、そういうのではないのだけど、そこそこの味で、値段で、このロケーションのバランスが良かったのだろうと思います。

ここ何年か、NYでは多分ラーメンブームのような気がします。前からいくつかあったのだけど、本当にこの数年の間で、倍増というか、きっともっと増えたと思う。本格派の日本の老舗や、人気店のNY店や、NYの日本食レストランチェーンが始めたものや、それを見て追っかけでオープンしたものなど、けっこうな数になる。個人的には、鳥人ラーメンがベスト in NY ですが、イーストビレッジにある 一風堂が恐ろしいくらい人気があります。何度か行ったのですが、入れたのは数回だけで、大概待ちが1時以上とか言われて他へ行くことが多い。一度なんかは、2時間半待ちと言われて、もの凄くムカついたことがある。別に人気なんだからしょうがないとは思うけど、やっぱり2時間半という待ち時間はどっから計算したらそうなるのか、ちょっと度を逸していて普段おとなしい人を怒らせるには十分な理由に成り得る。
反面、このブームにあやかってオープンしたようなラーメン屋もけっこうあり、早ければ半年も待たずに閉店になったところもある。人気のラーメンブーム。大成功の店と、速攻で閉店した店。この違いはなんだったんだろう。ラーメンの専門家ではないのでラーメン自体の味に関してはあまり言及できない。個人的な好みにも寄るだろうし。
ただこれだけは感じるというのは、成功してるラーメン屋は外人客が多い。いや、NYにあるのだから、外人というのは成立しないから言い換えると、日本人以外のお客が多いということ。特に、日本人以外のアジア系のお客さん。これが、重要なポイントのような気がします。
今アメリカでは日本食レストランというのはどこでもポピュラーになってきて、なんとなくヘルシーなイメージもあって大人気だと思う。大概のアメリカ人は、普通に 日本食と言えば、Sushi はもちろん 枝豆も、イーダマーミと発音して普通に知ってる。15年くらい前だと連れ立って日本食レストラン行っても、枝豆の食べ方をしらず、ずっと口をもぐもぐと枝豆の皮を噛んでいたアメリカ人は、よっぽど田舎をさがさないと今はいないだろう。アジア系、そしてアジア系アメリカ人は特にこの辺に反応してるはず。韓国でも台湾でも日本食がブームと聞くし、もともとラーメンは中華だし、その辺の潜在的な客層は大きかったのかもしれない。

話は事務所近くにできたラーメン屋さんに戻るが、ここの客層もアジア系を筆頭に、さまざまな人種のアメリカ人に大好評のようだ。ほぼ毎日通っていると、本当によくそこの常連ができていくのがわかる。この場所は、よく考えると近くにラーメン屋はなく、まともな味(そんなに特別に美味くなくても)を出せれば、成功は見えていたようにも思える。何となく潜在的にこの場所は、ラーメン屋を待っていたようなロケーションだったのかもしれない。それを考えると、どうしてもっと早くにこの場所に出来なかったのか、不思議なくらいだ。ただ、こういうマーケティングというのは、結果が見えてからは簡単だけど、その前にはほぼ見えないというのが常だろう。だからこそ、お店をオープンしたオーナーの判断は凄いなあと思う。
タイミング、ロケーション、クオリティ。
これは、うちの洋服屋にも通じるものだし、どうも波乗りにも通じるキィワードにも見える。何でも自分の興味ある事につなげてしまう、悪い癖です。そんな事を、担々麺ライスを待ちながら考えていました。
写真は、先週のロングビーチ。
ま、いつもの通りですが、朝日が異常にでかくて、まるで太陽にほえろのようでした。たまたまラーメンの話でしたが、これからラーメンネタで行くという事はありません。
ではまた次回。
鈴木 大器 DAIKI SUZUKI
NEPENTHES AMERICA INC.代表
「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。
1962年生まれ。89年渡米、ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。
09年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。