
先日見た映画の話です。
ちょっと前に最近観た映画の話になり、公開してすぐに観ていた「Tree of Life」が良かったと言ったら、じゃあ「senna」はと聞かれた。Senna って一体、何のことだろうと聞いてみると、これが懐かしい、かのアイルトン・セナを撮ったドキュメンタリー映画の事だった。昔、知り合いがF1を独占中継していたテレビ局にいたせいもあって、結構好きだった世界だ。ま、元はこの年代には結構いる、少年時代にスーパーカーブームを過ごした人たちは総じてF1に興味ある人は多いと思う。当時のチャンピオンであった、フェラーリのニキ・ラウダ氏は非常に人気もあったけれど、僕が一番気に入っていたのは、ジェームス・ハント。しかし、大人になって知ったのは、彼の行儀の悪さと、行き着いた果ての死に様。これも含めて、確かに希有の才能を持ったレーシングドライバーという事になるのだろうが。あの頃のマクラーレンは、ハントのおかげもあって、最高にカッコ良かった。多分このせいで、タバコはマルボロが好きになったと思う。
ハントが引退した時に、マシンの性能次第で、ドライバーの技量があまり問われなくなったレースはつまらないと言ったようだが、これは、確かセナも良く言っていたような気がする。

さて、友人に映画「セナ」の事を聞いて、興味は一気に加速し、先日ついに見に行ってきました。NYタイムスの評価は、なんと「Tree of Life」の4つ星より、半分多い、4つ星半。そんなに良いのか?とあまり期待せずに見たのだが、、、。
内容に関してはあまり触れたくないのだけど、一つだけ特に印象に残ったシーンを。それは、ジャッキー・スチュアートにインタビューを受けたときの発言。当時、プロストとの確執、というか、実際には接触合戦と言った方が良いほどの争いがあった中、スチュアートからのセナの危険なドライビンングに言及した時、セナはその大先輩のチャンピオンに真っ向から反論していた。この言葉は今も僕の頭の中から離れない。毎シーズン、ほぼ同じ段取りで進む仕事の中、自分自身でそのモチベーションを保つのは容易ではないと思う。慣れてくれば、言い方は悪いが楽する事を覚えてくるし、その先も見えてくる。だけど、本当にそれで良いのだろうか。プロと言われるのは、仕事ができる事であるのか、その実績によるものなのか。評価を得られたとしても、そこは居心地が良いのか、悪いのか。
一番最初は、単純だった頃は、情熱が全てだった。それが最強の武器だと思っていたような気がする。今は、この長いキャリアの中で、失いつつある、あのどこにやっていいのかわからなかった情熱をどうやったら取り戻せるのか、それを考えさせられてしまった。セナの言葉から感じられたのは、何だろ、「執念」だったのではないかな。
稲妻のように心に刺さりました。若干34歳で先立った天才レーサーの言葉はあまりにもカッコ良かった。日本ではもう公開されてるはずですが、見てない人は是非見てみてください。

最後に前回触れた、タクティクスですが、知人から連絡があり、未だ発売されてるそうです。早速ググってオーダーしてしまいました。まだ手元に届いていませんが、今から楽しみです。
写真は、先週のロングビーチ。
クイックシルバープロは、残念ながら優勝を逃したスーパースター、ケリー・スレーター氏を見かけました。しかし、彼のライドは素晴らしかったですね。特にセミで見せたラスト1分から360。見事でした。
ではまた次回。
鈴木 大器 DAIKI SUZUKI
NEPENTHES AMERICA INC.代表
「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。
1962年生まれ。89年渡米、ボストン-NY-サンフランシスコを経て、97年より再びNYにオフィスを構える。
09年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。