Director's Note

by TOKURO AOYAGI

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2019.01.11

欧州対策

弊社、株式会社NEPENTHESの今年の年賀状。 年が明けてからは怒涛の日々で、あっという間に来週からパリ出張。
これまでヨーロッパのバイヤーの方々向けには、トレードショーに参加してコレクションを見せていたのだけれど、今年から心機一転、自分たちでショールームを借りて、3ブランドを同時に見せることに。

すでにたくさんのアポイントを頂いて嬉しい限り、初日のアポイントの多さにクラクラしつつも、注目してもらえることに感謝。初めてのことで予想がつかないけれど、行き当たりばったり野生の勘で突き抜けよう。 パリは多分10年近くぶり。もはや土地勘も無く、時間は完全に止まっている。パリといえば未だに『ポンヌフの恋人』であり、夜の橋に花火が上がるのだ。

まだ二十代で若さを持て余していた頃、路地の二階の映画関係者が集まる飲み屋でたまに飲んでいた。十席あるかどうかの小さく暗いその店には素敵な女性店主がいて、いつもどこからとも無く世界中から人が集まっていた。ぎゅうぎゅう詰めのなか、大変なのがトイレ。奥の人がしたくなったら、皆が一度協力して席を空けるのが作法。ある夜、その日も店は満席だった。喧々諤々ガヤガヤと騒がしいなか、何人かがドアを開けては、満席で入れないと断られ、ドカドカと階段を降りていく音が店に何度も響いた。暫くして、またドアが開いた。客はフランス語で店主に何か尋ねて、店の中を覗いた。綺麗な女性だった。詰めても座れないと断られ、残念そうな顔をしてるのを見て、はたと気付いた。ジュリエット・ビノシュじゃん。これは帰しちゃいけない人だ。ちょっと待ったと、すぐさま会計を頼んで席を譲りジュリエット・ビノシュじゃあ仕方ねえよと気分良く店を出た。その日以来、勝手に親近感を持ってしまっていることは大目に見て頂きたい。 さて、同時に色々なプロジェジェクトも進行中。
今年から新境地に立つ昭雄と中川繁がオフィスにやってきた。久々にREMIXに出陣です。
テーマは「大人」。シティボーイとはまた違った昭雄の世界。ご期待ください。 そして、パリの後はロンドン。いよいよ新たなNEPENTHESのオープンです。

青柳 徳郎 TOKURO AOYAGI

NEPENTHES クリエイティブ・ディレクター。東京都出身。
1998年渡米。ニューヨークにてNEPENTHES AMERICA INC. に勤務。
2007年帰国。同時にプレスルーム/クリエイティブオフィス NEPENTHES SSP.を構える