養老孟司
「『人には伝えられないこと』に人生があるのか、それとも『人に伝えられること』に人生があるのか。ほとんどの時間をスマホに使っている人は、『人に伝えられること』が人生だと思ってますよ。それはね、生きそびれることです。(中略)TwitterだFacebookだLINEだと、そればっかりやってる人は伝達可能性だけを追求している。しかも情報化されたものはすでに『過去』なんです。過去にとらわれてしまうとたった今の人生がなくなってしまう。そんなことばっかりやってると生きそびれますよ、と僕は忠告しているんです。」
岩合光昭
「猫を撮影していると、猫を通して人が見えてきます。野生動物からはなかなか人が見えてこない。僕が家畜を撮るのは、どこかで人を欲してるからです。星野さんだって、野生ばかり相手にしていると行き詰まってくるところがあったでしょう。でも真面目だったから、別の探究心が芽生えて、民族の神話や歴史に惹かれていったのかもしれません。」
池澤夏樹
「僕はフィールドを持っていないけれど、同じようなことを考えている。そういう共感があったと思う。いかにも親友のように思われているけれど、実際に会ったのは東京とフェアバンクスで1度ずつ、それだけです。
会って話しても、お互いに共感し合うだけで議論にならないんだ。やっぱりこういう人だよなって」
今森光彦
「田舎の集落に住んで、身も心も農家の人になり切ってしまえば、それはとても楽しいでしょうが、
(その集落で)写真を撮ろうという気持ちはなくなってしまいます。逆に言えば、もし自分の愛車を撮影しようと思ったら、車を降りるほかないでしょう。」
この先生方の言葉はすべて、
「BRUTUS」星野道夫特集号からの抜粋(カッコ内は補足)。様々な人が星野さんについて語っているなかで、特に印象に残った部分。人の劣情を刺激するような自己演出を取り憑かれたように投稿しているSNSを見ると気が滅入るし、鱒と接するたびに絶対分かりあえない寂しさを感じて、自分と似た人と会うと言葉があまり必要なくなって、写真を構えるときは被写体との距離が比較的遠いから、どれもすっと頭に入ってきた。
この星野道夫特集が編集部の町田キャップから届いた日を境に、なんだか急にバタバタとしはじめて、旅行カバンに入れたまま一緒に九州や新潟を旅して、結局東京に戻って一気に読了。隅々まで読み尽くして、心はアラスカに飛んだ。気持ちよかった。
星野さん自身の姿がメインで使われていない分、よりその作品が立ち上がってくる。様々な角度からの取材切り口で、表紙の可愛いらしさを良い意味で裏切る深度。ほしよりこさん(大ファン)の漫画も良い。そして当たり前だけど、やはり星野さんの文章が良い。素晴らしい特集だった。大事に保存用本棚へ。ページを閉じた後、猛烈にクジラが食べたくなった。暑さも落ち着いてきたし、白金の「うずら」にお邪魔しよう。
そして、全ファッション関係者の注目を集める「BRUTUS」恒例のファッション号もいよいよ発売。今回はなんと「SOUTH2 WEST8」のファッションストーリーが登場。池田尚樹によるアーバンなストリーム スタイル。こちらもお見逃しなく。「センスのいい友」のコーナーでは、鈴木大器も登場しています。
http://magazineworld.jp/brutus/
この「BRUTUS」ウェブサイトにある「From Editors No.832」では、鮎川副編集長がデコトラの話を。
おまけに「BRUTUS」の植物特集がなんとムック本になったようで到着。サイズが大きくて意外。これでビザールプランツは一度完結。総まとめ、こちらも是非。

好評発売中!
このコラムから初の書籍が誕生しました。
ある格闘家の戦いの記録。
いまを残したいというただそれだけの、
でもとても切実な祈り。
日々の小さな幸せは、
実は奇跡の連続なのだと気づかせてくれる。
写真家・川内倫子
「3回手術すれば生きられます」。娘が誕生した翌日、聞かされたのはそんな言葉でした———。
格闘家として身体を酷使してきた父が、心臓疾患を持つ娘との日々を綴った人気ブログ「パパはね。。」を書籍化。軽やかな文体の中に見え隠れする、生と死の脆さ、命のたくましさ、母娘の強さが、著者自身の撮影による瑞々しい写真とともに心を打ちます。
木村伊兵衛写真賞受賞写真家、川内倫子氏も絶賛。